結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
「剣馬。おじいちゃん、何も言わなかった……?」
「新造さまは、放っておけ、と」
「やっぱりね。いいのかな? 会長さんの忠犬が、命令違反なんじゃない?」
剣馬は苛立たし気に狼くんを睨んだけど、何も言わなかった。
つまり、本当に剣馬の独断だったのだ。
「行こう、仁葵ちゃん」
「う、うん……」
狼くんに肩を抱かれたまま、一緒に教室へと歩き出す。
そっと振り返っると、剣馬は私を見たままその場に立ち尽くしていた。
なんだか置きざりにされる犬みたいに見えて、ちょっとだけ心が痛む。
「仁葵ちゃん。隙を見せちゃダメだよ」
「うん……わかってる」
「あと、仁葵ちゃんは俺だけ見てるって約束でしょ?」
「わ、わかってるってば」
「ほんとかなあ」
疑わしそうに私を見てから、狼くんが小さく笑う。
家でも学校でも、自分のペースを崩さない狼くんを見ていたら、私も自然と落ち着いてきた。