ぜんぶ欲しくてたまらない。



「……ちゃん、芽依ちゃん!…大丈夫?」


「あぁ、うん、大丈夫。ちょっと考え事しちゃってた」


「んー、何もないならいいんだけど。ね、教室いこ!」


「そうだね」



いつまでもここにいたら、後から来た人の邪魔になってしまう。


またわたしは咲良ちゃんに手を引かれながら教室へ向かう。



「咲良ちゃん、よく迷わないね」


「受験の日にも見学会の時にも来たでしょ?」


「うん、そうなんだけど……それだけじゃ覚えられないよ」


「芽依ちゃんは方向音痴だもんね」



咲良ちゃんは、あははっと笑う。


いいなぁ、記憶力が良くて。


わたしは家から学校までの道のりを覚えることでやっとだよ。


教室まではこれから毎日通うから嫌でも覚えると思うけど、理科室とか視聴覚室とか──特別教室の場所を覚えるには時間がかかりそう。


迷子になって遅刻してしまわないように、咲良ちゃんについて行かないと。



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