ぜんぶ欲しくてたまらない。



「ねぇ、ひとり?」


「……へ?」



すっと横から出てきた男の人がひとり、ふたり。


髪の毛を金髪やら赤髪やらに染めていて、きっと年齢は大学生くらい。



「いえ、あの……と、友達が」



彼氏と──そう言えたらナンパなんてすぐにいなくなる気がするのに。


デートなのに彼氏と一緒とは言えないもどかしさ。


コウくんとはただの幼なじみだから。



「友達って女の子?ちょうどいいじゃん、俺らもふたりだし一緒に遊ぼうよ」


「それはちょっと……」



しかもコウくんは男の子だし。


あぁ、早くコウくん戻ってこないかな?



「ちょっとごめんなさいっ……」


「あー、どこ行くの?」


「……っ」



ささっとこの場から逃げようとしたのに、肩を組まれて動けなくなってしまった。


知らない男の人に触れられるのはキモチワルイ。


わたしに触れるのはコウくんがいい。



「……コウ、くんっ……どこっ」




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