ぜんぶ欲しくてたまらない。



「ねぇー何してるの?」


「……コウくんっ」



ピンチに駆けつけてくれるコウくんはわたしのヒーロー。


でもちょっと遅いよ、コウくん。


このままどこかに連れて行かれちゃうんじゃないかって怖かったんだよ。



「その子、俺の彼女なんだけど。勝手に触らないでくれる?」



コウくんとは思えない力で肩に組まれていた男の人の腕を振り払った。


解放されて力の抜けたわたしをギュッと引き寄せてくれたコウくん。


キツい香水の匂いが離れて、落ち着くコウくんの香りに包まれてドキッと胸が音を立てる。



「なーんだ、彼氏持ち?言ってくれたらよかったのに」


「それなら興味ないや。じゃーね、可愛い彼女ちゃん」



もう用無しというように、ヒラヒラと手を振って人混みへと消えていった男の人たち。


コウくんが抱き寄せてくれていてよかった。


自分で思っていたよりも恐怖を感じていたみたいで腰が抜けてる。


支えてくれていなかったら、今にも床に崩れ落ちてしまいそうなくらい体に力が入らない。




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