ぜんぶ欲しくてたまらない。



「何やってるの芽依」



コウくんが怒ってる。


それともナンパに絡まれたわたしに呆れてる?



「ごめんなさ……」


「チケット買って戻ってきたら居なくなってるし、ようやく見つけたと思ったらナンパに絡まれてるし……あんまり心配させないで」



怒ってるというより不機嫌?

コウくん心配してくれてたの?



よく見ればコウくんは小さく肩を上下させていた。



そんな必死にわたしのことを探してくれてたの?



わたしを助けてくれたヒーローのコウくん。


たとえ嘘でもわたしを"俺の彼女"って言ってくれて嬉しかったよ。



「ありがと、コウくん」


「ん」



やっぱり大好きだな、コウくんのこと。


入場口の列に並びながら、隣のコウくんを見上げて思う。


本当にコウくんがわたしの彼氏なんだって言えたらどんなにいいだろう。


ううん、気分下げてたらダメだよ、わたし。


今日は思う存分楽しむんだから!




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