ぜんぶ欲しくてたまらない。
クラス発表の掲示を見た時から気になっていた名前。
わたしの好きな幼なじみと同じ名前だった人。
少し声が低くなったかもしれない。
でも、わたしが知ってる優しく落ち着く声。
わたしの大好きなコウくん。
「ねぇ、芽依ちゃん。もしかして……」
後ろの席の咲良ちゃんが小声でそう呟いてきた。
わたしはゆっくりと唾を飲む。
コウくんが戻ってきた。
ずっと会いたくて、声が聞きたくてたまらなかったコウくんが。
それからコウくんがなんて言ったのかはわからない。
わたしの中で時間が止まってしまったかのように何の音も聞こえなかった。
「芽依ちゃん、芽依ちゃん!自己紹介次だよ!」
ハッと意識を取り戻したのは、咲良ちゃんに肩を叩かれ、呼ばれてからのこと。
「へっ?」
「芦沢ー、大丈夫か?」
「あぁっ……はい、すみません」
焦って立ち上がってしまったせいで、ガタンと音が教室中に響き渡った。