ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ほら、行くよ」
「2名様ですか?」
「そうです」
「ちょっとコウくん!」
わたしの必死な訴えも届かず、コウくんはアトラクションの案内係の人とやり取りを進めている。
「はーい、いってらっしゃーい」
懐中電灯をひとつ手渡されて、逃げる間もなく背中を押される。
気づけば扉の向こうの暗闇の中。
暗すぎて懐中電灯を当てたところしか先が見えない。
ところどころ明かりがついてはいるけれど、豆電球のようなオレンジ色な光と今にも切れそうにチカチカしている不気味なものばかり。
どうしよう、怖すぎて体が動かない。
「来ないなら置いてくよ」
「や、やだよぉ……ひとりにしないでっ」
懐中電灯を持っているのはコウくん。
行ってしまったらわたしは暗闇にひとり残されることになる。
「お化けが怖いなんてお子様だね」
わたしが苦手なのをわかっていてそんなことするなんて意地悪すぎるよ、コウくん。