ぜんぶ欲しくてたまらない。



「はははっ、言い叫びっぷりだね」


「……なっ、はっ……むり」



どれくらい暗闇の中に居たのかはわからないけれど、出口という看板がついたドアが見えた途端、わたしはコウくんの腕を引っ張って全速力で走り抜けた。


何とか出口までたどり着いて、明るい日を浴びてホッとする。


でも、なかなか乱れた呼吸は治まらないし、涙も止まらない。


もう、ぜんぶコウくんのせいなんだからね!


それなのにコウくんは可笑しそうに隣で笑っている。


コウくんがこんなにお腹を抱えながら笑うなんて珍しい。


バカにされていることは明確だけれど、コウくんの笑った顔を見ているとなんだか落ち着いてきた。


人が多すぎるからかずっと無表情だったのに、今日初めてこんな笑っているコウくんを見たから。


コウくんも楽しそうでよかった。



「もうへーきなの?つまんないなぁ。さっきまであんなに震えてベッタリ俺にしがみついてたのにね」


「なっ……!」



コウくんに言われて蘇る記憶。


産まれたての子鹿のように足を震わせながら、必死にコウくんの腕にしがみついて、驚かされる度にコウくんに抱きついて───


恥ずかしすぎる……!





< 133 / 261 >

この作品をシェア

pagetop