ぜんぶ欲しくてたまらない。
「はははっ、言い叫びっぷりだね」
「……なっ、はっ……むり」
どれくらい暗闇の中に居たのかはわからないけれど、出口という看板がついたドアが見えた途端、わたしはコウくんの腕を引っ張って全速力で走り抜けた。
何とか出口までたどり着いて、明るい日を浴びてホッとする。
でも、なかなか乱れた呼吸は治まらないし、涙も止まらない。
もう、ぜんぶコウくんのせいなんだからね!
それなのにコウくんは可笑しそうに隣で笑っている。
コウくんがこんなにお腹を抱えながら笑うなんて珍しい。
バカにされていることは明確だけれど、コウくんの笑った顔を見ているとなんだか落ち着いてきた。
人が多すぎるからかずっと無表情だったのに、今日初めてこんな笑っているコウくんを見たから。
コウくんも楽しそうでよかった。
「もうへーきなの?つまんないなぁ。さっきまであんなに震えてベッタリ俺にしがみついてたのにね」
「なっ……!」
コウくんに言われて蘇る記憶。
産まれたての子鹿のように足を震わせながら、必死にコウくんの腕にしがみついて、驚かされる度にコウくんに抱きついて───
恥ずかしすぎる……!