ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる……!」
お化け屋敷が怖すぎたせいだけど、さすがにコウくんに抱きつくなんて大胆な行動をしすぎたかもしれない。
コウくんは笑ってたし、なんとも思ってなさそうだったけど。
んー、なんかそれもちょっと悲しいかも。
とりあえず気持ちを落ち着かせて、涙で崩れたメイクを直して、コウくんのところに早く戻ろう。
鏡で念入りに確認してトイレをあとにする。
「……あれ?」
恥ずかしくなって適当に目に付いたトイレに駆け込んだんだけど……
わたし、どっちから来たんだっけ?
右?
いや、やっぱり左?
最悪だ、迷子になっちゃった。
「どこ、コウくん」
「はぁ……やっぱり追っかけて来といてよかった」
「コウくん!」
死角になっていて見えなかったけれど、すぐ近くにコウくんは壁にもたれて待ってくれていた。