ぜんぶ欲しくてたまらない。
「トイレ行くくらいで迷っててどうすんの?しかも真逆に行こうとしてるし」
「ハイ、スミマセン」
仕方ないじゃん。
自分でも認めざるを得ないくらい極度な方向音痴なんだから。
「せめてスマホ持ってるんだから迷ったら連絡してよね」
「……はい」
確かに。
なんのための連絡手段……
次からは気をつけよう。
「ほら、」
「……?」
わたしに背中を向けたコウくんは後ろに手を伸ばす。
「ねぇ、早く手出してくれない?」
「えぇっ!?」
それは手を繋ぐっていうこと!?
「ちゃんと掴んでないとすぐいなくなるでしょ」
そっか。
あれだね、犬の散歩に使うリードみたいな。
それでも……
「んふふっ」
「なんで笑ってんの、気持ち悪い」
コウくんとまた手が繋げるなんて、嬉しすぎるよ。