ぜんぶ欲しくてたまらない。
「……も、もうすぐ頂上だよ、コウくん!」
コウくんからは見えないかもしれないけれど、もう中心にそびえ立つ柱が見えている。
観覧車の頂上といえばいろんな話を聞く。
そこで告白をしたら恋が実るとか、キスをしたら幸せになれるとか。
コウくんに自分の気持ちを素直に伝えられたらどんなにいいだろう。
コウくんとキスをするってどんな感じなんだろう。
きっとドキドキしすぎて、頭が真っ白になって、何も考えられなくなるに決まってる。
「……っ」
"自分の気持ちに素直になっていいんじゃないかな?"
コウくんと少しの同居生活をすることになった時、咲良ちゃんがそう言っていたことを思い出す。
「ねぇ、コウくん」
頂上まであと少し。
どうせ想いが通じる可能性が低いなら、せめてほんの少しの可能性を願掛けしたい。
「……何?」
わたしがコウくんの名前を呼ぶと、やっとこっちを向いてくれた。
静かなゴンドラの中。
わたしのうるさい胸の音ばかりが響き渡る。