ぜんぶ欲しくてたまらない。
「す……」
スキ。
そのたった2文字なのに、それを口にすることが難しい。
「す、素敵だね!この夜景!」
「さっきからそればっか」
「本当のことなんだから仕方ないじゃん」
いつの間にか頂上はとっくに過ぎてしまっていた。
観覧車を降りれば、夢のデートももう終わり。
コウくんはわたしのことどう思ってるんだろう。
やっぱりあの時と同じ、わたしはただの幼なじみなのかな。
いつまで経っても怖くて前に進めないわたし。
バカだなぁ。
張り切ってこんなオシャレなんかして。
幼なじみでも可愛いって思ってくれたかな?
コウくんは絶対口に出さないと思うけど。
わたしのことを女の子だって意識してくれたかな?
ほんの少しでいいの。
友達以上恋人未満の関係からちょっとだけ前に進めたら……
弱虫のわたしは、今日も一歩を踏み出せない。
明日からもわたしたちはいつもと変わらない幼なじみだ。