ぜんぶ欲しくてたまらない。



「す……」



スキ。


そのたった2文字なのに、それを口にすることが難しい。



「す、素敵だね!この夜景!」


「さっきからそればっか」


「本当のことなんだから仕方ないじゃん」



いつの間にか頂上はとっくに過ぎてしまっていた。


観覧車を降りれば、夢のデートももう終わり。


コウくんはわたしのことどう思ってるんだろう。


やっぱりあの時と同じ、わたしはただの幼なじみなのかな。


いつまで経っても怖くて前に進めないわたし。


バカだなぁ。

張り切ってこんなオシャレなんかして。


幼なじみでも可愛いって思ってくれたかな?


コウくんは絶対口に出さないと思うけど。


わたしのことを女の子だって意識してくれたかな?


ほんの少しでいいの。


友達以上恋人未満の関係からちょっとだけ前に進めたら……




弱虫のわたしは、今日も一歩を踏み出せない。


明日からもわたしたちはいつもと変わらない幼なじみだ。






< 140 / 261 >

この作品をシェア

pagetop