ぜんぶ欲しくてたまらない。



わたしの隣に咲良ちゃん。


わたしの目の前にコウくんが座る。


それから少し遅れて須藤くんがカツ丼をトレーに乗せて戻ってきた。



「ごめん、お待たせ!」


「須藤くんのカツ丼美味しそうだねっ」


「うん、すごいいい匂いする」



鼻から空気を吸うと、ふわりと甘い香りが漂ってくる。


須藤くんによるとカツ丼が一番人気のメニューらしく、仲のいい先輩からもオススメされたんだとか。


そんなに美味しいカツ丼なら高校生の間に一度は食べてみたいかもしれない。



「そうだ、来週から航大バイト始めるんだよ」


「……!?」



喉を潤そうとお茶を飲んだ瞬間、須藤くんが予想外なことを言ってきて、むせてしまうところだった。



「コウくんがバイト!?」


「え、どこでするの?」


「俺のバイト先のカフェだよ。ちょっと今人手が足りなくてさ、1ヶ月だけ手伝ってもらうことになったんだ」


「へぇーっ!頑張ってね、倉敷くん」




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