ぜんぶ欲しくてたまらない。



「ごめん、昨日戻ってきたばっかりで伝えられなかった」


「まぁ、いいけどさ。なぁ、連絡先交換しようぜ」



教室内はザワついているはずなのに、2人のやり取りが気になって聞き耳を立ててしまっているせいで、はっきりと会話が聞こえてくる。


わたしもコウくんの連絡先、知りたい。



「良かったね、芽依ちゃん!愛しの航大くんに再会できて」


「うんっ」



咲良ちゃんはわたしがコウくんに恋をしていることを知っている。


遠距離になり、連絡すらも取れていないことに落ち込んでいたわたしをよく慰めてくれていた。



「でも、名字変わったんだね。倉敷くんかー」


「うん、そうみたいだね……」



微かな記憶だけど、確かコウくんのお母さんの旧姓が"倉敷"だった気がする。



───もしかして?



考えられることはひとつ。


まさかとは思うけれど。


わたしにはとても幸せそうな家族に見えていたから、そんなことはないと思ってた。




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