ぜんぶ欲しくてたまらない。
「あのさ、航大の名字って間違ってなければ柴崎だったよな。なんかあったのか?」
聴覚が敏感になっている今、そんな須藤くんの問いかけが大きく耳に入ってくる。
わたしもそれは気になる。
───やっぱり、
「あー、離婚したんだよね、ウチの親」
「やっぱそんなんだな。別に深堀するつもりねぇし、答えづらいことごめんな」
「いーよ、別に。もう気にしてないし」
「そっか、それならいいんだ。まぁ、航大は航大だしな!」
「……ってぇ」
何度も須藤くんからバシバシと背中を叩かれ、迷惑そうに顔をしかめるコウくん。
でも、怒っているわけじゃなくって、逆に気を許している感じ。
2人のやりとりは、中1の頃と何も変わらないなぁ。
「そっかぁ、やっぱり離婚したんだ」
「ん?何、どうしたの?」
突然意味深な発言をしたわたしを心配そうに見つめる咲良ちゃん。
「えぇっ、あっ、コウくんと須藤くんが話してるの聞こえて……コウくんの親が離婚したらしくて」
理由を伝えると、咲良ちゃんに「地獄耳すぎ」と笑われた。