ぜんぶ欲しくてたまらない。
忘れさせてほしい。
梨里愛ちゃんと偶然ショッピングモールで居合わせてしまった次の日。
あまりにも朝から様子がおかしくて、大きなクマを作っていたわたしを心配して、咲良ちゃんが話を聞いてくれた。
「えぇーっ!?それで協力するって言っちゃったの?」
わたしの突然の告白に声を張り上げて驚いている咲良ちゃん。
目がまん丸になっている咲良ちゃんに、わたしは静かに頷く。
「もう芽依ちゃんのバカーっ!そこはちゃんと無理って言わないと!」
「言いたかったけど、言えなかった」
梨里愛ちゃんの気迫に押されて負けてしまったのもひとつ。
コウくんが梨里愛ちゃんの告白をOKしたことがあることもひとつ。
もしかしたらコウくんは梨里愛ちゃんのことが好きなんじゃないかなって思ってしまったから。
家に帰ってからずっと考えてた。
「本当にそれでいいの?芽依ちゃんは身を引くの?」
「それしかないよ。大丈夫、2年間会わずにやって来れたんだから、忘れることもできるよ」
そんなの無理に決まってるのに。
この2年間、一度もコウくんへの気持ちを忘れたことなんかない。
考えれば考えるほど会いたくなって、思えば思うほど好きになった。
「……芽依ちゃん」
咲良ちゃんもわたしの名前を呼んだきり黙り込んでしまう。
そんな沈黙を破るようにチャイムが鳴り、教室に先生が入ってきた。