ぜんぶ欲しくてたまらない。
「えっと、芦沢さんだよね?」
「……?」
「突然話しかけてごめん。俺、奥田 凱!隣の席だから、よろしくね」
「うん、よろしくね」
わたしは元の席より少しだけ後ろに下がったところ。
お隣は奥田くんらしい。
話すのは初めてかもしれない。
コウくんが窓側の一番後ろの席になったことを知ったのは、授業が終わったあとのこと。
奥田くんは気さくに話しかけてきてくれて、あっという間に仲良くなった。
「奥田くんバスケ部だったんだ」
「うん、中学から続けてて高校でも早くレギュラーメンバーになって試合にたくさん出るのが目標なんだ」
「へぇー、目標があるってかっこいいね」
「あはは、芽依ちゃんって面白いね!」
「……っ」
「あっ、名前で呼ぶのは嫌だった?」
「ううん、全然!突然でびっくりしちゃっただけ。名前で大丈夫だよ?」
「そっか、よかったー。嫌われちゃったかと思ってドキドキしたよ」
無邪気な笑顔にドキッとした。
奥田くんは優しくて、とても話しやすい。
ずっと沈んでいた心の傷を癒してくれるような気がした。