ぜんぶ欲しくてたまらない。



「こら、奥田!芦沢!私語が多いぞ!」


「あっ……」


「あー、目つけられちゃった」



そういえば、今は授業中だったっけ。


奥田くんと話すのが楽しくて、つい忘れてしまっていた。



「……すみません」


「罰として放課後2人で居残りな」



そ、そんなぁ。


落ち込むわたしとは逆に、奥田くんはそんなに気にしていないようだった。


先生が板書をするために後ろを向いた時、小声で両手を顔の前で合わせながら「ごめんね」と謝ってくれた。


先生に注意されてしまったのは奥田くんだけのせいじゃない。


わたしだって楽しくなって夢中で話してしまっていた。


わたしは謝る奥田くんにフルフルと首を横に振る。



「わたしこそごめんね」



そうわたしも謝ると、奥田くんは「優しいね」と微笑んだ。


奥田くんの笑った顔。


なんて言ったらいいんだろう。


こちらに向けられる度にドキッとする。


コウくんだってこんなに笑うことは少ないし、男の子の笑顔に慣れていないだけなのかもしれない。





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