ぜんぶ欲しくてたまらない。



「……って言いたいところなんだけどね!」



今の今までずっと真剣な目をしていたのに、すっかり笑顔の奥田くん。


まだわたしは心の整理がつかずにいるのに。



「芽依ちゃん、倉敷のこと忘れられないくらい大好きでしょ」


「……!」


「俺ね、芽依ちゃんに謝らなきゃいけないことがあるんだ」


「……なに?」


「芽依ちゃんがさ、倉敷とのことで悩んでるって知った時チャンスだと思ったんだ。俺を利用させて頼らせることで芽依ちゃんの心に漬け込んで、振り向かせようとしてた」



奥田くんは本当に申し訳なさそうに話す。



「こんなことされて怒ってるでしょ?本当にごめん」



頭を深々と下げて謝る奥田くんに、わたしは大きく首を横に振る。


そんなこと怒ってない。


わたしだって、そんな奥田くんの優しさに漬け込んで、甘えて、自分のことしか考えてなかった。


最初からわたしのことを好きだと思ってくれて、それなのにコウくんに未練タラタラのわたしを受け入れて、優しく向き合ってくれていた。


謝らなきゃいけないのはわたしの方だ。





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