ぜんぶ欲しくてたまらない。



「わかってたんだよ。俺には入る隙がないって」


「え?」


「だからさ、怖いかもしれないけどちゃんと倉敷と話してみた方がいいと思う」


「……奥田くん」


「それに倉敷だって芽依ちゃんのこと……いや、これは」


「……?」



奥田くんが何を言いかけたのかはわからないけれど……


一体、どこまでわたし思いで優しいんだろう。


想いが届かないと思った今、一番辛いのは奥田くんのはずなのに。


なんでそんなに優しい笑顔で笑えるんだろう。



「もしダメだったらまた俺が慰めてあげる。だから、思いっきり自分の気持ちぶつけておいで?」


「……っ、ありがとう奥田くん」



こんな素敵な人に好きになってもらえたわたしは幸せ者だ。



「ごめんね、奥田くん。奥田くんの気持ちには答えられない。だって、やっぱりわたしはコウくんのことが好きでたまらないから……」



うんうんと聞いてくれる奥田くん。


ずっと笑顔でいてくれるから、わたしの気持ちも楽になれた。



「夏休み中にもう一歩踏み出してみる」


「よく言ったね、芽依ちゃん。俺は芽依ちゃんを応援してるよ」


「本当にありがとう」



奥田くんも、咲良ちゃんだって。


感謝してもしきれない。


みんなわたしの背中を押してくれているのに、わたしはいつまでこうしてウジウジとしているんだろう。


自分に甘えるのはもうおしまい。


勇気を与えてくれた2人の気持ちを踏みにじっちゃいけない。


ちゃんとコウくんに伝えるんだ。


どうしようもなくコウくんのことが好きで好きでたまらないんだって。





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