ぜんぶ欲しくてたまらない。



コウくん、怒ってるの?


わたしが気まずさを感じてコウくんと距離をとってしまっていたから?


どうしよう、これじゃ話そうにも声をかけられそうにない。



結局、目の前で楽しそうに話している咲良ちゃんと須藤くんとは真逆に、コウくんと一言も話さずお祭り会場へと来てしまった。



「さすが、人多いねぇ。はぐれないように気をつけてね?」


「うん、ありがとう」



振り返って優しい言葉をかけてくれる須藤くんにお礼を言う。


前からも後ろからも人が押し寄せてきて、見失えばすぐに迷子になってしまいそう。


ちゃんと2人の後ろをついて行かなくちゃ。


それよりも後ろから感じる不機嫌オーラ。


人混み嫌いのコウくんにはここは地獄のようなものかもしれない。


それでも突然帰ってしまわずにちゃんとついて来てくれているっていうことは、わたしたちとお祭りに来ることが嫌ではないのかな?


それなら良かったけれど。



「一応ひと通り屋台の前通ってきたけど食べたいものあった?」



須藤くんが次に話し始めたのは、屋台の立ち並ぶゾーンを抜けた広場。


屋台で食べ物を買った人たちが集まって、楽しげに話しながら食べている。


わたしたちのように浴衣を着て、かき氷を食べる学生グループ。


りんご飴を片手に写真を撮る女の子たち。


ふわふわなわたあめに満面の笑顔を浮かべて幸せそうな子ども。


屋台から漂ってくる美味しそうな匂い。


それが、あぁ、お祭りだなと思わせる。





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