ぜんぶ欲しくてたまらない。



「ごめん、ありがとう芽依ちゃん、航大。咲良ちゃんと行ってくるね!」



手を振る2人は人混みの中へと消えて行った。



「上手くいくといいな、咲良ちゃんと須藤くん」



思わず漏れてしまった心の声。



「そうだね」


「……っ!だ、だねっ!」



まさかコウくんも共感してくれるとは。


すごく棒読みだったけど……薄々気がついていたのかな。


咲良ちゃんと須藤くんの距離が近づいていたことに。


もしかしたら須藤くんから何か聞いているのかもしれないし。



「あ、わたし、いちご飴買ってくるね!」


「待って。1人で行こうとしてるの?すぐ迷子になるのに?バカなの?」


「……っ、そこまで言わなくても」



行こうとしたわたしの腕を引っ張り、引き止めたコウくん。


今日、初めてコウくんと目が合った。


……すぐにそらされてしまったけれど。



「一緒に行く」


「えっ?」


「だから、一緒に行くって言ってるの。早く行くよ」


「ま、待ってよ!」



掴まれたままの腕に引かれ、連れて行かれる。


少し力の入ったコウくんの手。


わたしがはぐれないようにするためなのか、しっかりと繋がれている。


表情はすごく不機嫌なのに、コウくんの手からは優しさも感じる。


こうして2人で歩くのは久しぶり。


さっきから緩んだ口元が戻らない。






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