ぜんぶ欲しくてたまらない。



「いちご飴とぶどう飴、ひとつずつ」


「はいよー」



屋台のおじさんに注文したのはコウくん。


わたしの分も頼んでくれた。


定番のりんご飴や人気のいちご飴ではなく、どちらかと言えばマイナーなぶどう飴を選ぶのはコウくんらしい。


どちらも串に2つずつついて、200円。


コウくんが500円玉を渡して、100円のお釣りを貰っていた。



「はーい、ありがとねー」


「行くよ、芽依」


「ね、ねぇ、お金!」



いちご飴をわたしにくれたコウくんは、またわたしの手を引いて来た道を戻っていく。


わたし、まだコウくんに飴代を渡していない。



「いいよ、それくらい」


「……ありがと」



コウくんが買ってくれたいちご飴。


赤く染った半透明な飴の中に、真っ赤な果実が入っている。


屋台の光に反射してツヤツヤな表面。


ペロリと舐める。


当たり前だけれど、すごく甘い。


それになんでだろう、いつもより美味しく感じる。


食べてしまうのが勿体ないくらい。


舐めているうちに表面の飴が薄くなり、軽く歯を当てるだけで噛み砕けるようになる。


飴の甘さといちごの甘酸っぱさが美味しくて好き。


すごく幸せな気分。



「……?」


「……っ」



いちご飴に夢中になっていると隣から視線を感じて振り向くと、コウくんはすぐに顔を逸らしてしまった。



なんだったんだろう?

なんか変な顔でもしちゃってたかな?



それはちょっと恥ずかしい。






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