ぜんぶ欲しくてたまらない。



コウくんはというと、一瞬驚いていたものの梨里愛ちゃんのことをじっと見つめながら無言のまま。


反応が返ってこないのに梨里愛ちゃんはずっとコウくんに話し続ける。


夏休みに入り、須藤くんのバイト先に新人が入ってきてくれたことでコウくんの助っ人生活は、わたしが悶々と悩んでいた間に終わっていた。


それが梨里愛ちゃんにとってはコウくんと会える日がなくなり寂しかったらしい。


積もりに積もる話があるのか、ポンポンと言葉が飛び出していた。



コウくん、梨里愛ちゃんとも連絡先交換してたんだね。



もともとマメじゃないコウくんからは連絡してもすぐに返ってこなかったり、来ても短い言葉しかなかった。


でも、梨里愛ちゃんとはどうだったんだろう?


全然返してくれないって言ってるけど、元恋人の関係ならわたしよりもやり取りをしてたんじゃないか。


嫌なことばかりが頭をよぎる。



「そうだコウくん、梨里愛と一緒にお祭りまわろうよ!ね、いいでしょ?」



……え?



コウくんは表情を変えなかったからどう思ったのかはわからない。


でも、わたしや咲良ちゃん、須藤くんを取り巻く空気は確かに固まった。




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