ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ねぇ、梨里愛ちゃん。申し訳ないけど航大は俺たちと来てるんだよね」
「うん、これから4人で花火見に行こうとしてたところなんだ」
何も言葉が出てこないわたしの代わりに、須藤くんと咲良ちゃんが梨里愛ちゃんに事情を説明してくれる。
そんな2人の顔は笑顔だけれど、引きつっていた。
「そうなんだー。でも、梨里愛も航大くんと花火見たい!航大くん一緒に行こうよ!」
話が通じない。
梨里愛ちゃんはコウくんに夢中。
わたしはその様子を見ているしかできない。
そんなわたしに気がついたのか梨里愛ちゃんと目が合った。
「……っ」
そして、梨里愛ちゃんはニコッと笑う。
……怖い。
背中にゾクッと寒気が走って、体が震える。
「ねぇ、芽依ちゃんいいでしょ?」
その顔は、ショッピングモールで梨里愛ちゃんに会い、帰り際にしていた表情と似ている。
"梨里愛の邪魔はしないでね"
そう言われた時と同じ。
きっと今も、口に出していないだけで目がそう言っている。
コウくんはわたしのものなのだと。
そうわたしに訴えかけるように。