ぜんぶ欲しくてたまらない。



「……いいよ」


「芽依ちゃんっ!?」



あぁ、バカだ。


あの日から何も成長していない。


わたしの返事に梨里愛ちゃんはパッと笑顔になる。


ありがとうとでも言っているように。


目を丸くした咲良ちゃんは近寄って肩を抱き寄せ支えてくれている。


俯いているせいでコウくんの顔は見ることができない。



今、どんな顔してる?

びっくりしてる?

悲しんでる?

嬉しいと思ってる?



───わからない。



視界の端で、梨里愛ちゃんがコウくんに耳打ちしているのが見えた。


その直後、コウくんは……



「梨里愛とまわるから、俺抜けるわ」



そう言った。


梨里愛ちゃんが笑う。


コウくんは梨里愛ちゃんを選んだ。


一緒に来ていたわたしたちじゃなく、梨里愛ちゃんを。


わたしがいいって言った。


梨里愛ちゃんの提案に許可を出したのはわたし。


でも選ぶ権利はコウくんにあった。


それでも、選んだのは間違いなく梨里愛ちゃんだった。



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