ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ありがとうっ、またね!」
梨里愛ちゃんはコウくんをつれて行ってしまった。
2人の姿はすぐに見えなくなる。
「ねぇ、芽依ちゃん!本当によかったの!?」
ゆさゆさと咲良ちゃんに体を揺すられる。
わたしは力が入らずされるがまま。
揺するのを止めない咲良ちゃんに須藤くんが止めに入った。
その須藤くんの視線はわたしに向いている。
わかってるよ、自分がバカだってこと。
せっかく一歩を踏み出そうとしたところなのにね。
梨里愛ちゃんには渡したくないって思ってたのに。
いざ目の前にすると動けないんだね。
「ちょっとお母さんから電話来てたから、かけ直してくるね……」
「……芽依ちゃんっ!」
引き止める咲良ちゃんと須藤くんを振り払って人混みに紛れる。
きっとすぐには見つけられない。
胸がチクチクして痛い。
とても苦しい。
苦しすぎて壊れてしまいそう。
コウくんにわたしたちを……
わたしを選んでほしかった。
お祭りの屋台はもう遠い。
ここに人はいない。
でも騒がしい音楽はここまで届いてくる。
ここなら泣いても気づかない。
わたしは声を上げて泣いた。
何もできない弱い自分が嫌いで、悔しくて。
いくら泣いても、溢れる涙は止まってくれなかった。