ぜんぶ欲しくてたまらない。
「そんなに芽依ちゃんと見たかったの?」
不機嫌そうな素っ気ない低い声。
今の言葉を発したのも梨里愛。
コイツの本性はこっち。
梨里愛の性格が悪いことも知っている。
今だって梨里愛と一緒にいる理由は、軽く脅されたからだ。
俺が芽依たちと別れる前、梨里愛が俺を自分の方へ引き寄せて耳打ちをしてきた。
"ほら、芽依ちゃんもいいって。一緒に来てくれないと……あのこと芽依ちゃんにバラしちゃうよ?
──それとも約束、忘れちゃった?"
死角で見えなかったけれど、きっと梨里愛は黒い笑みを浮かべていたに違いない。
そう言われたら、俺は断れるわけがない。
"あのこと"を芽依に知られるわけにはいかないんだから。
「航大くん無視は酷いよ……そんなに芽依ちゃんが好きなんて嫉妬しちゃう」
「梨里愛に関係ないでしょ」
「関係あるよっ!梨里愛は航大くんが好きなの!いつになったら梨里愛のこと好きになってくれるの……?」
「……バカじゃないの」
好きになるどころか一度も好きになったことはない。
勝手なことを言わないで欲しい。
返すのが面倒になった俺が無言で居続けると、面白くなくなったのか梨里愛も大人しくなった。