ぜんぶ欲しくてたまらない。


「こんにちは」とだけ言ってすぐに家の中に入れば大丈夫。


同じ学校の制服だし、悪い人ではないはずだ。


嫌な汗をかきながら恐る恐る近づいていく。


自分の家に帰るだけなのに、なんでこんな慎重にならないといけないんだろう。


近くに来て、やっとわたしの目はその人の顔をはっきりと見ることができた。



「コウくん!?」


「……おかえり」


「えっ、ただいま?」



そう返したのはもう条件反射的なもの。


驚きも大きいけれど、コウくんがわたしに"おかえり"と言ってくれたことがものすごく嬉しかった。



「コウくん、ここで何してるの?」


「何って……待ち伏せ?」


「待ち伏せ?」



意味がわからなくて、オウム返しをしてしまった。


そんな待ち伏せだなんて犯罪みたいな……



「芽依、変なこと考えてるでしょ」


「……っ!そんなことないもん」



芽依って、コウくんが芽依って呼んでくれた!


心が踊っている。

盛大な喜びの舞を。



「ねぇ、ニヤニヤして気持ち悪いよ」


「えぇ、コウくん酷い」




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