ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ほら、行こー」
「いや、ちょっと待って!」
わたしの力じゃ男の人の腕を振り解けるわけもなく、2人に挟まれ屋台の方へと出てきた。
内心、会場まで戻って来れたことにほっとする。
今すぐに助けを求めて逃げてしまいたいけれど、そんなことをしたらまた迷子になりかねないし、何よりこの人たちは話してくれないだろう。
もしここを歩いていれば、いつか咲良ちゃんたちとすれ違って気づいてもらえるかもしれない。
この人混みで気づいてもらえる確率は低いかもしれないけれど、その可能性にかけてみるしかない。
ギュッと目をつぶってただ心の中で願った。
「あれ?芽依ちゃんじゃない?」
目の前からわたしを呼ぶ声が聞こえる。
咲良ちゃんや須藤くんの声じゃない。
この声は───
「奥田くんっ」
奥田くんとその友達。
バスケの試合を見に行った時に見たことがある顔が並んでいて、バスケ部の仲間たちとお祭りに来ていたのがわかった。