ぜんぶ欲しくてたまらない。
「もう探してたんだよー、すぐ迷子になるんだから」
ポンポンと奥田くんの口から出てくる嘘に、わたしはポカンと口を開ける。
「なーんだ、本当にただの迷子だったの?」
「それならちゃんと言ってよー。はい、この子返すね!もう迷わないように気をつけてー」
案外この人たちは優しい人だったみたい。
奥田くんの嘘を簡単に信じて、すぐに返してくれた。
なんなら最後に心配なんかしてくれちゃって、手をヒラヒラと振りながら屋台の奥へと消えていった。
「ナンパに引っかかっちゃうなんて……放っておけないね、芽依ちゃんは」
知らな人とわたしが歩いていたから心配したんだよと奥田くんはわたしの背中をさすってくれた。
「ありがとう奥田くん、本当に助かった」
誰も見つけてくれなかったらどうしようって怖かったから。
「どういたしまして。……でも、芽依ちゃん一人でお祭り来たわけじゃないよね?どうして一人?」
奥田くんがそんな疑問を抱くのもわかる。
確かに一人でお祭りに来るなんて、さっきの男の人たちが言っていたようにナンパ待ちをしている人くらいだろう。
「えっと……」
理由を奥田くんに伝えようとして思い出した。
梨里愛ちゃんがコウくんの手を引いて、人混みの中へと消えていく姿を。
「ちょっと場所変えよっか。ごめん、俺ここで抜けるねー」
「……えっ、奥田くん?」
奥田くんは一緒に来ていたバスケ部の仲間たちに断りを入れて、わたしの手を引いて歩き出した。