ぜんぶ欲しくてたまらない。
一歩を踏み出すんだ、わたし。
奥田くんの思いを今度こそ無駄にしてはいけない。
「コウくん、そっちに行っていい?」
わたしの言葉にコウくんはコクンと頷いた。
本当のことを言えばまだ怖い。
手が震えてる。
ゆっくり一歩ずつ近づくと、コウくんもまた一歩ずつこちらへ来てくれていた。
わたしとコウくんの距離は気づけば50センチくらい。
手を伸ばせば届きそう。
心臓がバクバクと音を立てる。
どうしよう。
なんて話を切り出そう。
「……見つかって良かった」
先に口を開いたのはコウくんだった。
やっぱりコウくんはわたしを探してくれていた。
梨里愛ちゃんと一緒にいたはずなのに。
コウくんが梨里愛ちゃんを選んだ事実は変わらないのに。
今だけはわたしを選んでくれた。
それだけで嬉しい。
また涙腺が崩壊してしまいそう。