ぜんぶ欲しくてたまらない。
「芽依、そこ座って」
コウくんが指さしたのは近くにあった石段。
ちょうどここは神社へ繋がる道の途中だったらしい。
わたしはコウくんに言われるがまま座る。
するとコウくんは目の前にしゃがんで、わたしの足に手を触れた。
「……どうしたの?」
「また慣れない靴で走ったでしょ。絆創膏ある?」
「うん……」
ハイキングをした時と同じような光景。
コウくんはわたしの足の擦り傷見つけて、また手当をしてくれた。
下駄の花緒が擦れて、親指と人差し指の間がずっと痛かったんだ。
今の今まで泣きすぎて気がつかなかったけど。
「こんなになるまで一人で走ってはぐれて……バカじゃないの」
コウくんは俯きながらそう言う。
───なんで。
「……あれもこれも誰のせいでっ」
違うのに。
こんなこと言いたいわけじゃないのに。
「なんで、わかってくれないのっ!」
自分は何を言っているんだと思う。
まだ何も行動していないくせに。
自分の想いを伝えようともせずに、ずっと逃げてきただけのくせに。