ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ごめん」
大きな声を出したわたしに驚いたコウくんは目を見開いてこちらを見てから、静かに俯いて謝った。
コウくんは何に謝ってるんだろう。
わたしが勝手に責めてしまっているだけで、コウくんは何一つ悪いことなんてしてないのに。
「……わたしこそ、ごめん。八つ当たりみたいなことしちゃって……」
そしてまた訪れる沈黙の時間。
何か話さないと。
「り、梨里愛ちゃんは、どうしたの?」
本当は聞きたくなんかなかったけど、他に話すことが見つからなかった。
「……さぁ?置いてきたから知らない」
「そ、そっか」
本当に置いて来ちゃったんだ。
コウくんの口から直接それを聞いて安心する自分がいる。
「コウくんっ」
「芽依、あの…」
また訪れそうな沈黙を遮ろうとコウくんを呼んだのと同時に、コウくんから名前を呼ばれた。
「ご、ごめん、何?」
あぁ、落ち着けわたし。
さっきからずっとソワソワしっぱなしだ。
手を胸に置いて深呼吸をする。
「芽依こそなんか話そうとしなかった?」
「ううん、そんな大したことじゃないからいいの。コウくんから話して?」
本当はとても大事な話で、ちゃんと自分の気持ちを伝えたい。
でも、まだそれを口に出す決断はしきれていなかった。