ぜんぶ欲しくてたまらない。



「芽依に聞いてもらいたいことがある」



「……なに?」



コウくんがわたしの方を真っ直ぐに見つめてくる。


コウくんからは珍しい真面目な雰囲気が感じられる。


さっきまでとはまた違う緊張を感じて、ゴクリと唾を飲み込んだ。



「俺が転校してた2年間のことを聞いて欲しい」



コウくんが口にしたのは、ずっとわたしが知りたかったこと。


わたしの知らないコウくんの2年間。


梨里愛ちゃんとの出会い、コウくんの両親の離婚……わたしが近くにいない間にコウくんのまわりではたくさんのことが起きていた。


きっとこうして自分の話を真面目に話すことがコウくんは苦手なはず。


それでも一つ一つ、わたしにわかるように話してくれた。



両親が離婚してしまった理由がコウくんのお父さんの浮気が原因だったこと。


家に居づらくなって、夜遊びが激しくなっていたこと。


その頃から梨里愛ちゃんとよく遊ぶようになり、付き合うようになったこと。


コウくんが引っ越してから帰ってくるまでのことを包み隠さず、全て話してくれた。


話し終えたコウくんはわたしの方から顔を背け、口を閉ざした。


心做しか、コウくんの体が震えている気がした。


怖くて仕方がなかったさっきまでのわたしのように。





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