ぜんぶ欲しくてたまらない。
「改めて言うよ、芽依」
コウくんがいきなり立ち上がって、わたしの目の前に来た。
まだこぼれ落ちる涙を拭って顔を上げてコクンと頷いてみせる。
「俺は芽依のことが好きだよ」
「……うんっ」
もうわかったよ。
ちゃんと伝わったよ、コウくんの気持ち。
「だから、俺と付き合ってほしい」
あぁ、せっかく涙を拭ったのに。
嬉しい時も涙って止まらないんだね。
「うぅっ、もちろんだよっ」
「もう、芽依は泣き虫だね」
そう言ってコウくんは優しくわたしの涙を綺麗な指で拭う。
「そんな芽依も可愛くて好きだよ」
……コウくんってこんなに甘かったっけ?
好きな人に好きって言われるのってこんなに幸せな気持ちになれるんだね。
さっきからドキドキが止まらないよ。
「ねぇ、キスしていい?」
「……えっ!?」
き、キス!?
「芽依とキスしたい。ずっと我慢してたんだけど」
「え、えっ、ちょっと……!」
そんなこと突然言われても心の準備ができていない。
「……んっ!」
あたふたしていると、突然視界がコウくんでいっぱいになって、簡単にわたしの唇を奪われた。
「芽依がイヤって言ってもするけどね」
いつもの調子のコウくんだ。
ワガママで自分勝手な意地悪コウくん。
「聞く意味ないじゃん、コウくんの意地悪……」
わたしがそう呟いたと同時に花火が上がった。
どうやらこうしているうちに花火大会が始まってしまったらしい。
「ここじゃ見えないからあっち行こ」
「うんっ」
恋人同士になって初めて繋いだ手。
コウくんの手も熱くてドクンドクンと脈を打っている。
今のわたしはきっと世界一幸せ者だ。