ぜんぶ欲しくてたまらない。
「あっ、じゃあコウくんのお母さん帰ってくるまでウチくる?ちょっと散らかってるかもしれないけど……」
多分春休み中に片付けたから比較的綺麗な方だとは思うけど。
小さい頃から常連さんだったコウくんなら気にしないかな。
「別にいいよ、寒くもないし」
「だって、廊下に置いておくのはわたしが心配だもん」
「心配って……」
「ねぇ、もしかしたらコウくんのお母さん、ウチにいるかもしれない」
「え?」
コウくんが何と言おうと上がってもらうつもりで玄関を開けると、お母さんのではない見知らぬ女の人の靴がひとつ。
それに奥のリビングから話し声が聞こえるし、きっとあの声はコウくんのお母さんの声。
「……ホントだ」
だるそうに立ち上がったコウくんも玄関先にある靴を見て呟いた。