ぜんぶ欲しくてたまらない。
ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ねぇ、全然終わってないじゃん」
「こ、コウくん!?……なんでウチにいるの?」
お盆も過ぎて、夏休みも残すところあと2週間くらい。
そんな平日のある日にわたしはお母さんにまたお使いを頼まれて、帰ってきた時のこと。
「芽依にお客さんが来てるわよ?」
家に帰ってそうそうお母さんにそう言われて、嫌な予感はしてたんだよ。
その予感はやっぱり当たって、自分の部屋に戻ると机の上に広がったやりかけ……と言ってもほぼ白紙の宿題を見るコウくんの姿があった。
コウくんと会うのは付き合ってから今日が初めて。
いつも通りにしていればいいはずなのに、変に意識してしまうわたしは挙動不審になってしまう。
「なんでそこに立ってるの?こっちおいでよ」
わたしはこんなに心乱されているのに、余裕そうなコウくんがちょっとムカつく。
「えっと……今日会う約束してたっけ?」
してないよね?
うん、絶対してないはず。
「約束しないと彼女に会っちゃいけないの?」
「……っ」
───か、彼女。
まだその響きに慣れない。
慣れられるはずがない。
今までずっとコウくんとは幼なじみの関係だったのに。
ずっと望んでいた関係でも、そうすぐには対応できるほどわたしはよくできてない。