ぜんぶ欲しくてたまらない。
「あがっていい?」
「うん、もちろん」
コウくんはまるで自分の家かのように違和感もなく入っていく。
何度も来たことあるし、部屋の間取りも隣とほぼ変わんないし、迷うこともないと思うけど。
「ねぇ、母さん」
「あっ、おかえり航大」
「おかえりじゃないんだけど……」
コウくんの後ろにいても聞こえる大きなため息。
「あらぁ、航大くんじゃない!しばらく見ないうちに大きくなって……それにイケメン!」
そんなテンション高いわたしのお母さんに軽く会釈をするコウくん。
「でしょ!誰に似たんだか……あ、わたし?」
どうやらわたしとコウくんのお母さんたちは話に花を咲かせているらしく、あははと大きな笑い声で盛り上がっている。
お母さんたちも久しぶりの再会だし、積もる話もあるんだろう。
ため息つきたくなるコウくんの気持ちも少しはわかるけど。
「コウくんのお母さん、お久しぶりです」
わたしもコウくんの後ろからひょっこりと顔を出して挨拶をする。
頑張って顔を出さないと前が見えないなんて……コウくんも背が伸びたね。
一体何センチ?
中1の頃は同じくらいだったのに、首が痛くなるくらい上を向かないとコウくんの顔が見えない。