ぜんぶ欲しくてたまらない。



コウくんはそう言ったけれど、絶対にこの数字はわたしの誕生日。


コウくんがわたしの誕生日をスマホの解除コードにしてくれている。


そんなこと知ったらわたし、期待しちゃうよ。


こんな小さなことでもこんなに嬉しくなってしまう。



「何考えてるのか知らないけど、早くやっちゃってくれる?」


「うん、ごめん」



この幸せをもっと噛み締めたくて。


メッセージアプリを開いてコウくんのQRコードをわたしのスマホで読み取る。


すると、ピコンとコウくんのアカウントが表示された。


どこかシンプルな風景のコウくんのアイコン。


何も飾らないそんなコウくんがまた愛おしい。



「ねぇ、できた?」



だるそうに呟くコウくんは、いつの間にか定位置のわたしの布団の上で寝そべっていた。



「あと少し」



わたしのメッセージ画面からコウくんへスタンプを送る。


"スキ"の文字が入ったハートを抱きしめるクマさんのスタンプを送ろうか迷ったけれど、そこまでの勇気はなくて、同じ種類の"よろしくね"と書かれたスタンプを代わりに送った。



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