ぜんぶ欲しくてたまらない。
「あっ……」
インクがしっかりついていなかったのか、それともしっかり押さえられていなかったのか。
スタンプを避けてみると、左端の方が切れてしまっていた。
「下手くそ」
「うるさいなぁ」
平気で酷いことを言う。
「まぁまぁ、スタンプちゃんと押してあるのわかるし大丈夫だよ!」
「だよね?」
咲良ちゃんがフォローしてくれて安心する。
「酷いぞ、航大。芽依ちゃんに謝れよー」
「いーの、芽依だから」
「仲が良いのはいいことなんだけどさー」
ったく、と須藤くんがコウくんの代わりにわたしに謝ってくれた。
須藤くんは何も悪くないのに。
「大丈夫だよ、コウくんがいつもこうなの知ってるし」
「2人はお互いのことわかってるし、相変わらず本当仲良しだね」
「あはは」
須藤くんもわたしたちが幼なじみで、ずっと一緒にいたことを知っている人のひとり。
周りから見れば今まで通りで、コウくんとの距離を感じているのは、わたし自身だけなのかもしれない。