ぜんぶ欲しくてたまらない。



「あっ……」



インクがしっかりついていなかったのか、それともしっかり押さえられていなかったのか。


スタンプを避けてみると、左端の方が切れてしまっていた。



「下手くそ」


「うるさいなぁ」



平気で酷いことを言う。



「まぁまぁ、スタンプちゃんと押してあるのわかるし大丈夫だよ!」


「だよね?」



咲良ちゃんがフォローしてくれて安心する。



「酷いぞ、航大。芽依ちゃんに謝れよー」


「いーの、芽依だから」


「仲が良いのはいいことなんだけどさー」



ったく、と須藤くんがコウくんの代わりにわたしに謝ってくれた。


須藤くんは何も悪くないのに。



「大丈夫だよ、コウくんがいつもこうなの知ってるし」


「2人はお互いのことわかってるし、相変わらず本当仲良しだね」


「あはは」



須藤くんもわたしたちが幼なじみで、ずっと一緒にいたことを知っている人のひとり。


周りから見れば今まで通りで、コウくんとの距離を感じているのは、わたし自身だけなのかもしれない。



< 40 / 261 >

この作品をシェア

pagetop