ぜんぶ欲しくてたまらない。



傷口が当たらなくなっただけで、すごく歩くのが楽になった。


それでもなかなか早くは歩けなくて、スピードの遅いわたしにコウくんは歩幅を合わせてくれる。



「ありがとうコウくん」



どんなにワガママで、面倒くさがり屋で、素っ気ないコウくんでも、さり気ない優しさはずっと変わらない。


こんな小さなことでもコウくんのことが好きになって、気持ちが抑えられなくなってしまう。


無意識に"好き"と伝えてしまいそうでこわい。



「大丈夫?痛くない?」


「……へっ、大丈夫だよ!ほら、全然歩ける!」


「ならいいけど」



ゴールの施設の建物が見えてくると、それと同時に入口前で待ってくれていた先生と咲良ちゃんたちの姿が見えた。



「芽依ちゃーん!」



大きく手を振る咲良ちゃんに答えるようにわたしも大きく手を振り返す。



「2人とも待っていてくれてありがとう」


「よく頑張ったな、芦沢!昼までまだ少し時間もあるしゆっくり休めよ」


「ありがとうございます、先生」



先生の言う通り、お昼まではあと30分ほど時間があり、部屋で休むことにした。




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