ぜんぶ欲しくてたまらない。



「やっと一日が終わったねー」


「うん、さすがに疲れたよ」



勉強道具の入ったカバンを抱えて部屋へと戻る帰り道。


部屋ももちろん仲良しの咲良ちゃんと一緒。


……と言っても、10人一部屋の大部屋なんだけれど。


それもそれで修学旅行のようでとても楽しそう。



夜はやっぱり恋バナで盛り上がるのかな?



部屋に着き、自由時間を満喫する前に荷物を整理整頓する。


勉強道具ももう使わないから大きい荷物の方へまとめてしまおう。


そう思い、カバンに手をかけた時。



「……うそっ!」


「芽依?どうかした?」



突然大きな声を出したわたしに数人の女子が振り返り、咲良ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。



「無いの」



わたしが大きな声を出してしまった理由。



「無いって?」


「コウくんから貰った大切なキーホルダー」



カバンにつけていた小さな羊のついたキーホルダーは、コウくんが転校する前にプレゼントしてくれた大切なもの。


よくコウくんはわたしが羊に似てると言って、最後の日に「このキーホルダーは芽依みたいだったから」と手渡された。



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