ぜんぶ欲しくてたまらない。



ない、ない……ない。



施設から続く道をひたすらに下りながら探していく。


絶対見つけて帰らなきゃ。


コウくんがくれた唯一のプレゼントなの。



「あっ!」



スマホの明かりにキラリと反応した小さなもの。


駆け寄ってみると、見覚えのある羊のキーホルダーだった。



「よかったぁ」



汚れてしまったキーホルダーの土を落として、しっかりと確認する。


ずっと使っていて少し傷のついてしまっているキーホルダー。


間違いなくコウくんからもらったわたしのもの。


ふと前を見れば、これまた見覚えのあるもので、コウくんがわたしの靴擦れの手当をする時に座っていた岩の近くだった。


きっとその時に落としてしまったんだろう。


それにしても本当に見つかってよかった。


ずっと張り詰めていた緊張が解けてホッとする。


それと同時に夜風がわたしの髪をすり抜けた。



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