ぜんぶ欲しくてたまらない。
可愛いと言ってほしい。



「ただいまー」



新入生オリエンテーションも無事に終わり、通常授業が始まった。


やっぱり勉強のレベルは上がっていて、板書の速度も早くて難しい。


もともと勉強が苦手なわたしは、一日授業を受けるだけでもうヘトヘト。


ここのところ毎日家に帰ってきてはソファーにダイブするのが日課になっている。


……けれど、今日はそれができない。



「おかえり芽依」


「あっ、芽依ちゃんお邪魔してますー」



今日はお互いに予定があったのか、コウくんのお母さんがウチに遊びに来ていた。



「もうこんな時間だったのね。遅くまでごめんなさい」


「全然大丈夫よ、わたしこそ忙しいのにわざわざ引き止めちゃってごめんなさいね」


「申し訳ないけど明日からよろしくね、芽依ちゃん」


「……へ?」



わたし?


コウくんのお母さんが帰り間際にわたしの名前を呼んだ。



よろしくねって何のこと?



パタパタと帰る支度をして家を出るコウくんのお母さんを止める気にはなれず、どういう意味か聞くことができなかった。




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