ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

「おーちゃん、ベルト、苦しくないの」


ちょっとばかりお姉さんになった気分で聞いてみる。

だけど、返ってきたのはくぐもった声。


もう、しょうがないなぁ……。


可愛らしい姿につい世話を焼きたくなってしまって、わたしはおーちゃんに近づいた。


このまま寝ちゃうなら、ベルトをつけたままだと苦しいはずだ。

……ちょっとだけ恥ずかしいけど、外してあげよう。


ゴロン、と仰向けに転がっているおーちゃんの腰へと手を伸ばす。

きつく締められているベルトに触れて、緩める——突然、すごい力で手を掴まれたわたしは、ビクリと体を揺らした。


「……なにしてんの」


ウトウトしていた様子はどこへいってしまったのか、おーちゃんのまぶたはぱっちりと開かれていた。

その瞳の鋭さに、わたしは萎縮してしまう。


「なにって、苦しそうだから、ベルトを外そうと……」


じっとこちらに向けられた視線に、わたしは動けなかった。
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