ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「それより、はい。これ荷物」
「ありがとう」
「……捻挫してたんだって? 他はなんともないって、言ってたくせに」
「あのときはほんとにそう思ったんだよ」
「気づかないとか……。お前らしいな」
バカにされたように言われて、ぷくっと頬を膨らませる。
「後になってから痛くなったの」
「ハイハイ」
……なんて。
あのとき確かに、痛いなって思ったけど……。
目を開けてすぐ康晴の顔が近くにあったことに驚いて、それどころじゃなくなっちゃったなんてこと、言えるわけがない。