ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
08.溢れる衝動
マンションの廊下をカツ、カツ、と音を立てながら歩くわたしを、おーちゃんがありえない、という顔で見た。
「まさか骨折してるとはな」
「……」
えへ、と笑ってみせると、呆れた視線をよこされてしまった。
学校を休み、朝一で病院に行ったわたしは、体育祭で捻挫したと思われた足首を診てもらうと、なんと足の甲の骨折が判明した。
レントゲンを撮って、簡易ギブスをつけられ、松葉杖まで渡されて。
たった今、衝撃の事実に、とぼとぼとおーちゃんと帰宅しているところだ。
「俺は、昨日のお前がなんで歩けてたのか不思議でたまらない」
「わたしも……」
松葉杖を足と一緒に動かすのは慣れなくて、正直すごく疲れる。
わざわざ会社を休んでまで、こうして付き添ってもらえたのは、とてもありがたかった。