ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


……妹。

……そんな風に本気で思っていたのは、いつの話だったかな。


甘ったるいコーヒーを我慢して飲み込みながら、ふとそんなことを考えた。


『……おーちゃん、どうしよう……っ、お姉ちゃんが——』


去年、俺が入ったばかりの会社で研修を受けていた間に、携帯に入っていた留守電。

その愛花の取り乱した様子は、今でも忘れられない。

少なくとも、あのとき、……自分の気持ちを抑え込むことを決心したとき、俺の気持ちは、俺の知らないうちに、ずいぶんと大きくなっていたことに気がついた。
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