ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

「おーちゃんがわたしのこと、妹だって言ってた、って」

「……まあ、言ったよ。あの後、会社で詳しいこと聞かれて、嘘ついた。女子高生と生活してるなんて言いずらいだろ」


……正確には、萩原相手に、だけど。


俺は苦笑して、それを誤魔化すように手元のコーヒーに口つけた。

きっと愛花が聞きたいのは、そういうことじゃないだろう。


「……わたしと仲良くしたいんだって。きっと杉本さんはおーちゃんのことが好きだから、妹の、わたしと……」


『不安にさせちゃったから』


……なるほどな。


意地悪の内容がわかって、俺は申し訳ない気持ちで愛花を見た。

今回の原因は、俺が杉本さんを断る手段に、愛花のことを巻き込んだせいだ。

ああいう逃げ方はするべきではなかった。

もっときっぱりと断るべきだった。